ヒギンズの部屋

akiohtani.exblog.jp
ブログトップ

カテゴリ:音楽( 1 )


2006年 12月 10日

オペラ「ミカド」の話

この言葉、フランスでは、お菓子のポッキーのことを指すらしいが、昔の赤坂にあったキャバレーを思い出す人もいるだろう。ちなみにあの跡地は、ミカドビルなるビルとなっているが、ミカドがそのまま不動産業に転じた結果なのかそれは知らない。

ここでいうミカドはそれではない。紳士の国イギリスのオペラである。オペラで「ミカド」というとさぞすごいものと思うかもしれないが、実は、コミックオペラで、「笑い」をとるような荒唐無稽を根本としたストーリーである。

これを書いたのが、19世紀後半に活躍した、ウイリアム・シュヴェンク・ギルバート(台本)と、アーサー・サリヴァン(作曲)というコンビである。このコンビで何曲もコミック・オペラを書いた。のちに、彼らのオペラは、サヴォイ・ホテルというホテルの劇場で上演されたため、サヴォイ・オペラともよばれる。

このオペラ、日本ではともかく、当時、欧米で異様に人気があって今でもそうらしいのは、コレクターもののオルゴールの曲目になっていたり、カラオケ版のCDが売っていたりすることでもわかる。

ストーリーがいかにファニーであるか、というとこんな具合である。
---
日本のどこかにあるティティプーという町が舞台となる。(この名前からして、以前テレ朝の何かの番組の中でやっていた、外国で紹介されたおかしな日本を取り上げる「奇妙な果実」風なのだが、すべてにわたってヘンなニッポンのオンパレードとなる)

ここではミカドが、夫婦以外の男女がいちゃついた場合、男は死刑という妙な法律を決めていた。

さて、ティティプー(TiTipu。おそらく秩父からきていると思われる)に旅芸人ナンキ・プー(Nanki Pu。この語源は不明。以後人名はミカド除きすべて意味不明)がやってくるところから話は始まる。実は、ナンキ・プーは皇太子なのだが、年増女に言い寄られた挙句、宮中から逃げ出したという設定になっている。

そのナンキ・プー、以前、この町にきた時に、ヤムヤムという女性に一目ぼれしたのだが、ヤムヤムには、後見人の許婚者である仕立て屋のココがいると知り、あきらめた。しかし、その後、ココが死刑囚になったという話をききつけ、それならと喜んでやってきたのだ。

ところが、ティティプーの町では一計を案じ、ココを死刑執行長官に任命してしまった。これでは、順序としてまず死刑囚が自分に執行しなければ、次の死刑囚への執行ができないため、事実上、死刑は行われなくなってしまった。

それをきいた、ナンキ・プーはがっかりする。

ティティプーの要職にあった者たちは、死刑執行長官の仕立て屋ココの下で、弱みをにぎられながら仕事をするのはまっぴらとやめてしまい、ひとりプーバーが大臣からなにから、すべての要職を一手に兼任、莫大な権力を握っていた。

そこへ、ナンキ・プーに言い寄った年増女カティシャが現れ、ナンキ・プーの正体をばらそうとするが失敗する。

ところが、ミカドはある日、ここで死刑執行が行われていないことに気づき、1ヶ月以内に誰でもいいから死刑を執行せよというお触れを出す。弱ったのはココである。

ナンキ・プーは、ヤムヤムと一緒になれないなら、生きていては仕方がないと自殺しようとするが、それをみたココが、ナンキ・プーに自分の身代わりになってくれと頼む。

そこでナンキ・プーは、身代わりになる代わりに、ヤムヤムとの仲を1ヶ月の間許してくれといい、ココはしぶしぶ承諾する。

しかし、やがてココが、プーバーから、夫が死刑になったときには、その妻は生き埋めにされなければならないと聞かされると、ヤムヤムを失っては大変と悩みだす。

ココは一計を案じ、プーバーを買収、プーバーが証人となってナンキ・プーを死刑にしたという書類を作り、ナンキ・プーとヤムヤムを逃がす。

そこへミカドが突如として現れる。死刑がすでに執行されたと聞いて残念がるが、実はミカドの訪問の真の目的は、いなくなった皇太子を捜すことにあった。

ミカドの陰で、ココが作った死刑の書類をみたカティシャは死刑になったのが、ナンキ・プーだとミカドに告げる。

ミカドは怒って、ココ、プーバー、そしてヤムヤムの友人ピッティ・シンの3人を死刑にするといいだす。処刑は朝食の後にしてほしいと3人は懇願、ミカドはそれを認める。ミカドが退出したところに、ナンキ・プーがヤムヤムと現れる。

ココは事情を話し、ナンキ・プーと相談する。ナンキ・プーは、ココがカティシャと結婚すれば、すべては収まると言い出す。ココは、唖然とするが、それしか方法がないと、ナンキ・プーの提案を受け入れる。

ココは、カティシャに求婚、意地を張っていたカティシャもココの熱意に動かされる。

ミカドの前に、ナンキ・プーとヤムヤムが現れ、カティシャが事情を説明、2組のカップルが誕生して大団円となる。
---

こういうストーリーである。いかにも可笑しいのだが、これに輪をかけて、衣装デザインというものが、いろいろなプロダクションをみても(僕は実際に動いているものでみたといえば、DVDで出ているカナダのものと戦前の英国の映画くらいであとは写真やイラストだが)中国と日本と韓国を足して割ったような奇妙なつくりなのである。

音楽の中でも、一部、日本語が出てくる場面もあって、特に、ミカドの登場シーンでは「宮さん宮さんお馬の前にひらひらするのはなんじゃいな、トコトンヤレトンヤレナ」という明治期のヒット曲が原曲にきわめて似ているがしかし異なるという、「奇妙な果実」にふさわしい節回しで出てくる。

実際に、米国のファンと思われる方が作っている、こういうホームページがあって、ここにいくつかの初演以来のいくつかの上演に基づくと思われるイラストも紹介されている。


ちなみに、このホームページは台本全文のほか、すべての曲がMIDIデータで入手できるなど、非常に充実している。

なお、DVDは、カナダのストラトフォードフェスティバルのものが、Dreamlife というレーベルから発売されている(もちろん、字幕つき)ほか、以下にあげるようなCDがある。CDは、テラークしか国内盤がないのが残念である。

 (Dreamlife ホームページ)

CD:
(全曲盤のみ。都内等のショップで収集したもの。年号は録音あるいは最初の発売年)
1926年 ドイリー・カート・オペラ・カンパニー (Pearl GEMM CDS 9025)
1957年 プロ・アルテ・オーケストラ/サー・マルコム・サージェント指揮 (EMI 7 64403 2)
1962年 サドラーズ・ウェルズ・オペラ・オーケストラ/
     アレクサンダー・ファリス指揮 (EMI 7243 5 68000 2 1)
1973年 ドイリー・カート・オペラ・カンパニー/
     ロイヤル・フィルハーモニー/ロイストン・ナッシュ指揮 (LONDON 425 190-2)
1990年 ドイリー・カート・オペラ・カンパニー/
     ジョン・プリス=ジョーンズ指揮 (SONY S2K 58889)
1991年 ウェールズ・ナショナル・オペラ・オーケストラ/
     サー・チャールズ・マッケラス指揮 (TELARC 国内盤PHCT-7001 CD-80284)

しかし、7,8年前だろうか、京都在住のクラシックファンY氏とパソコン通信で知り合い、彼が、古都のクラシック専門スナックに案内してくれたとき、マスターにたずねたら、狭い店内からそのテラーク盤を引っぱり出してくれた。ミカドのことはY氏も知らないようだったが、専門のスナックだけあってマスターがチェックしてくれていたというのが嬉しかった。

■(c) 2001 by higgins
[PR]

by akiohtani | 2006-12-10 09:41 | 音楽